粉じん爆発について Dust Explosion

粉じん爆発について


保安対策に対する課題と粉じん爆発の脅威
今日、世界のどこにおいても、食品、化粧品、薬品、染料などの工業製品に触れない日はありません。ハイテク粉体技術により、企業における生産活動もますます高度化されており、新しい製品が日々開発され市場に出現しています。
これ等の製品はいずれも可燃性であるか、または可燃性材料により作られており、可燃性粉体を製造、あるいは取り扱うすべての産業工程には、火災と爆発の危険性が存在すると言っても過言ではありません。
粉粒体はその表面積から爆発し易く、露出面上に1mm以上の粉じん層があると又は粉じん層が全露出面の5%以上となる場合は危険な状態であるとされています。


粉じん爆発1






















25分毎に世界中のどこかで爆発の可能性があることを歴史は物語っています。国内においても1952年から1997年までの46年間で281件の粉塵爆発が発生しており、死傷者は697名、その内死者は110名にも達しています。
1995年から1999年の5年間に明らかにされている20件の爆発事故例からは、アルミ、紙、テレフタル酸、ショ糖エステル、飼料原料、亜鉛、ケイ素化合物木材、タンタル、マグネシウム等の粉塵による爆発が発生していることが報告されています。またアメリカの化学安全性調査委員会(CBS)によれば1980年から2005年の間に判明しているだけでも281件の粉じん爆発が発生しており、死者は119名、負傷者は718名にのぼっています。

2008年には米国南部ジョージア州の砂糖精製工場で大きな爆発があり、工場内の14人が死亡、30人以上が病院に運ばれる事故が発生しています。

Imp. Sugar











この事故は砂糖の粉じんが爆発の原因で、袋詰め前の砂糖を貯蔵するサイロで爆発が起きたとされており、建物は骨組みを残すだけの状態に壊れ、巨大なサイロも黒焦げで天井部分が激しくめくれ上がる大事故となっています。
可燃ガス、ミスト及びほとんどの粉体は、製造輸送・貯蔵中に大気中にて爆発の危険性があります。一旦爆発が発生しますと、密閉圧力は急速に上昇、装置を破壊し人為的にも大きな被害をおよぼす危険が常に存在します。


 

粉じん爆発の発生条件とはどのようなことなのでしょうか?
最初に、酸素濃度が爆発限界酸素濃度以上あること。不活性ガスである窒素添加による限界酸素濃度はアルミで6%、コーンスターチで9%、木粉で10%、ライ麦で13%と言われています。 次に、分散した粉じん濃度が爆発下限界以上の濃度であり、そして静電気を含む電気、衝撃、高温、化学の各着火源が最小着火エネルギーを満たしている時、粉塵爆発は発生します。

粉じん爆発の条件は、粉じんが爆発性であり、粉じんが空中に浮遊し、濃度が爆発範囲にあり、発火源が存在し、そして燃焼のための空気が存在することです。粒子サイズは420ミクロン以下ですが、540ミクロンの粒子でも爆発することが確認されています。粉じんの粒子径が小さい程爆発が激しくなり、粉じんの粒子径が大きい程爆発が弱くなります。粒子径は直接Kst値に影響します。

粉じん爆発は飼料原料、砂糖、金属粉、ファインケミカルから超微粉体に至るまで、その危険性が増大しています。爆発防護が採用されている一例としては、バケットエレベーター、ミル、集塵機、噴霧乾燥機、サイロ、混合機、ビン、ホッパー、オーブン、フィルター、コンベヤー、粉砕機、送風機、石炭粉塵粉砕プラント、セメントプラントなどがあります。
爆発の威力は、0.014MPa(G)で人が地面に倒され、0.034MPa(G)で建物が全壊、鼓膜が破れます。0.07MPa(G)となると生存は困難、爆発時の燃焼生成物からでる熱は500度以上となります。

産業界で扱われる粉体の種類は穀類など農産物や薬品、プラスチックなど化学合成品、あるいは金属化合物などの新素材に至るまで多種多様で、その多くは可燃性物質です。ハイテクには粉体技術が不可欠なものとなってきている中で、空気と接触しただけで発火するような比表面積の極めて大きな超微粉体などの製造も行われるようになってきています。
このような可燃性粉体は、一部の粉体を除いて、一般に何らかの発火源で単に空気中で燃えるという概念で扱われ、国内では特に消防法や労働安全衛生法での危険物に指定されておらず、その製造が規制されているわけでもありません。粉体物質の製造や利用、または新しい設備の導入においては、あらかじめそれらに伴う危険性評価と予防対策について検討し処置を講ずることにより、爆発事故は防ぐことができるのです。 

 
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